本日
マグネシウム補充による低マグネシウム血症を伴った糖尿病高血圧成人の降圧効果: 無作為化二重盲検、プラセボ対照臨床試験
2009年、メキシコMexican Social Security Instituteの研究者らは、塩化マグネシウム補充による低マグネシウム血症を伴った糖尿病高血圧成人の降圧効果の臨床介入試験に関する報告をしたので、その論文概要を以下に紹介します。
目的:
経口マグネシウム補充(塩化マグネシウム(MgCl2)液)の降圧効果を検討するために、利尿剤治療でなくカプトプリル剤を併用している低マグネシウム血症(マグネシウム濃度<0.74 mmol/L(1.8 mg/dL))を伴う糖尿病高血圧成人で二重盲検プラセボ対照の試験を行いました。
方法:
当初370人の患者がスクリーニングされ除外基準適用後、40〜75歳で82人の対象者がランダムに登録されました。4か月以上、一日当り介入グループ対象者42人はマグネシウム量450 mgに等しい塩化マグネシウム(MgCl2) 2.5 g (1000 ml当り50 gのMgCl2を含む50 mlの溶液)およびコントロール対象者40人はプラセボを服用しました。主要なアウトカム(エンドポイント)は収縮期(SBP、<140 mm Hg)および拡張期(DBP、<90mm Hg)血圧の低下でした。
結果:
82例のランダム化対象者のうち79例が完全に最後までにフォローされました。マグネシウムグループはコントロール対象者のプラセボグループと比較し、収縮期(SBP)(−20.4±15.9 対 −4.7 ± 12.7 mm Hg, P=0.03) および拡張期(DBP) (−8.7±16.3 対 −1.2±12.6 mm Hg, P=0.02)血圧は有意に低下し、そしてHDLコレステロール値(high-density lipoprotein-cholesterol)(0.1±0.6対 −0.1±0.7 mmol/L , P=0.04)は有意に増加しました。血清マグネシウムと血圧間の調整後のオッズ比は2.8(95%CI: 1.4–6.9)でした。
結論:
塩化マグネシウム(MgCl2)の経口マグネシウム補充は、低マグネシウム血症を伴った糖尿病高血圧成人の収縮期(SBP)および拡張期(DBP)の血圧を有意に低下させます。
参考文献:
Guerrero-Romero F and Rodríguez-Morán M. The effect of lowering blood pressure by magnesium supplementation in diabetic hypertensive adults with low serum magnesium levels: a randomized, double-blind, placebo-controlled clinical trial. Journal of Human Hypertension 23:245-251, 2009
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19020533
【コメント】
この臨床介入試験では塩化マグネシウム補充は低マグネシウム血症を伴った糖尿病高血圧成人の血圧を下げHDLコレステロールを上げる効果を示したことに意義があると言えます。
研究者らのデータに基づき、マグネシウム補充は低マグネシウム血症のためリスク要因を持った患者で高血圧症の治療には補助剤であるべきで、また、マグネシウム不足と高血圧症患者のために実施されるべきであるという声明を支援します。
この臨床介入試験で塩化マグネシウムが使われた理由として、吸収・生物学的利用能(Bioavailability: 生物学的利用能とは、飲食物、薬物、サプリメントのマグネシウムのどの位が腸から吸収され、最終的に体の細胞や組織で有効に使われるかを数字で表したものといえます。)が他の市販マグネシウム化合物より高いので使用されました。
執筆者のGuerrero-Romero博士と Rodríguez-Morán博士は2006年の日本で開催された国際マグネシウムシンポジウムにも来られました。なお、参考文献に横田らの論文(Yokota, K et al., Journal of the American College of Nutrition (JACN) 23(5):506S-509S, 2004)が引用されています。
当ホームページでは、塩化マグネシウムの臨床介入試験と疾患について報告してきましたので、以下に纏めました。
2012.01.24 塩化マグネシウム補充による降圧効果の臨床試験
結論: 塩化マグネシウム(MgCl2)の経口マグネシウム補充は、低マグネシウム血症を伴った糖尿病高血圧成人の収縮期(SBP)および拡張期(DBP)の血圧を有意に低下します。
Guerrero-Romero F and Rodríguez-Morán M. The effect of lowering blood pressure by magnesium supplementation in diabetic hypertensive adults with low serum magnesium levels: a randomized, double-blind, placebo-controlled clinical trial. Journal of Human Hypertension 23:245-251, 2009
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19020533
2011.11.17 高齢2型糖尿病患者のうつ治療における経口マグネシウムサプリメントの有効性と安全性: ランダム化、同等性試験
結論: 塩化マグネシウムは、低マグネシウム血症を伴ったうつ病高齢者2型糖尿病治療にイミプラミン(抗うつ薬)毎日50 mgとほぼ同等に有効です。
Barragán-Rodríguez L, Rodríguez-Morán M, Guerrero-Romero F. Efficacy and safety of oral magnesium supplementation in the treatment of depression in the elderly with type 2 diabetes: a randomized, equivalent trial. Magnesium Research 21:218-223, 2008
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19271419
2010.02.24 健常ヒト被検者の食後血清脂質反応に対するマグネシウムの影響
結論: 健常ヒト被験者において塩化マグネシウムサプリメントが脂肪吸収を抑制することで食後高脂血症を改善することを示唆しています。
Kishimoto Y, Tani M, Uto-Kondo H, Saita E, Iizuka M, Sone H, Yokota K, Kondo K. Effects of magnesium on postprandial serum lipid responses in healthy human subjects. British Journal of Nutrition 103(4):469-72, 2010
2009.01.19 マグネシウムの脂肪細胞分化に及ぼす影響
結論: 塩化マグネシウムを高濃度で3T3−L1前駆脂肪細胞に作用させると、分化を促進する可能性、インスリン共存下ではインスリン抵抗性を改善する可能性が示唆された。
岸本良美、近藤(宇都)春美、吉岡絵理、才田恵美、平田悠美子、飯塚麻貴、野本佳世子、田口(柳澤)千惠、貴堂としみ、谷真理子、横田邦信、曽根博仁、近藤和雄: マグネシウム高含有にがりの脂肪細胞分化に及ぼす影響.機能性食品と薬理栄養 4:353, 2007
2007.08.20 メタボリックシンドロームの予防 −その1−
2003年、メキシコMexican Social Security Institute and the Research Group on Diabetes and Chronic Illnessesの研究者らは、“マグネシウムのサプリメント(塩化マグネシウム)は、2型糖尿病のインスリン感受性を改善し、血糖を改善する(無作為二重盲検)”と報告しています。
Rodriguez-Moran M and Guerrero-Romero F, Diabetes Care 26:1147-1152, 2003
2003年、東京慈恵会医科大学の横田らは、軽症の2型糖尿病患者(高血圧、高脂血症などの合併症含む)に天然濃縮塩化マグネシウムを補充するとインスリン抵抗性、高血圧、中性脂肪が大きく改善したことから、マグネシウム補充の臨床的有用性を、国際マグネシウムシンポジウム・2003ケアンズにて発表しました。詳細は、以下の文献と本に報告しています。
Yokota, K et al., Journal of the American College of Nutrition (JACN) 23(5):506S-509S, 2004
http://www.jacn.org/cgi/content/full/23/5/506S
横田邦信:糖尿病とマグネシウム.Clinical Calcium 15:59-68, 2005、
横田邦信:特集「マグネシウムと動脈硬化」.JJSMgR 25:18-30, 2006、
横田邦信著“メタボリックシンドローム”対策の必須ミネラル「マグネシウム健康読本」 現代書林 2006年9月発行」
横田邦信:2型糖尿病発症−インスリン分泌とインスリン抵抗性へのマグネシウムの関与.分子糖尿病学の進歩−基礎から臨床まで−2006.(門脇 孝、春日雅人、清野 進、渥美義仁・編)、第1版、pp108−116、金原出版、東京、2006
横田邦信:糖尿病とマグネシウムの関係は?『特集|サプリメントと代替医療』.肥満と糖尿病 6:1:90-92, 2007、
横田邦信:日本人2型糖尿病発症へのマグネシウム(Mg)の関与.日本臨床栄養学会誌 28:301-306, 2007
2004年、メキシコMedical Research Unit in Clinical Epidemiology of the Mexican Social Security Instituteの研究者らは、“インスリン抵抗性があり低マグネシウム血症症例の非糖尿病へのマグネシウム サプリメント(塩化マグネシウム)によりインスリン抵抗性が改善する(無作為二重盲検)”と報告しています。
Guerrero-Romero F, et al., Diabetes Metab 30:253-258, 2004
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。
参考文献 −更新−
本日、参考文献の「英文」に以下の文献を追加いたしました。文献内容は近日中にアップします。
塩化マグネシウム補充による降圧効果の臨床試験
Guerrero-Romero F and Rodríguez-Morán M. The effect of lowering blood pressure by magnesium supplementation in diabetic hypertensive adults with low serum magnesium levels: a randomized, double-blind, placebo-controlled clinical trial. Journal of Human Hypertension 23:245-251, 2009
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19020533
東京都民のマグネシウム摂取量不足持続
マグネシウムの日本人の食事摂取基準と推定摂取量の比較表を1ヶ所更新(ピンク色で表示)致しましたので、お知らせします。
更新内容は、「平成21年東京都民の健康・栄養状況(最新版)」 平成23年8月東京都福祉保健局を含みます。
日本人の食事摂取基準(2005年版および2010年版)男性30〜49歳でマグネシウムの推奨量は、1日当り370mgです。この推奨量と比較すると、1日当りの平均摂取量は、「平成21年東京都民の健康・栄養状況(最新版)」では男性30〜49歳で238〜257mgと113〜132mg不足状態が持続しています。

(参照)
1. 「日本人の食事摂取基準(2005年版)」平成16年11月22日厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室栄養指導係報道発表資料
「日本人の食事摂取基準(2010年版)」平成21年5月29日厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室報道発表資料
2. 「平成15年 国民健康・栄養調査結果」平成17年4月21日厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室栄養調査係報道発表資料
「平成18年 国民健康・栄養調査結果の概要について」平成20年4月30日厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室
「平成19年 国民健康・栄養調査結果の概要について」平成20年12月25日厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室 報道発表資料
「平成20年 国民健康・栄養調査結果の概要について」平成21年11月9日厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室 報道発表資料
「平成21年 国民健康・栄養調査結果の概要について」平成22年12月7日厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室 報道発表資料
3. 「東京都民の健康・栄養状況(平成17年国民健康・栄養調査 東京都・区実施分集計結果)」平成19年6月東京都福祉保健局
「平成19年 東京都民の健康・栄養状況」2009年8月東京都福祉保健局
「平成20年 東京都民の健康・栄養状況(最新版)」平成22年8月東京都福祉保健局
「平成21年 東京都民の健康・栄養状況(最新版)」平成23年8月東京都福祉保健局
コメント:
今回、マグネシウムの日本人の食事摂取基準と推定摂取量の比較表を最新データに基づき更新致しました。
残念ながら、東京都の発表では、1日当り推奨量からすると近年の食事からのマグネシウム摂取量は113〜132mgが不足し、およそ66%しか充足されていない状況です。
マグネシウムの摂取不足が生活習慣病、特に、2型糖尿病・メタボリックシンドロ−ムの発症と密接に関わっていることが基礎的・臨床的研究でも明らかにされています。今後マグネシウム摂取の重要性がさらに認知されて食育に取り入れられる事が切に望まれます。
MAG21研究会のホームページ右上には、検索 Search がありますので、例えば検索用語として“摂取不足”を入力してSearch ボタンをクリックすると関連記事がリストアップされます。ご利用下さい。
当ホームページでは、マグネシウムと糖尿病、高血圧やメタボリックシンドロームとの密接な関係についても解説して来ました。
2011.11.17 高齢2型糖尿病患者のうつ治療における経口マグネシウムサプリメントの有効性と安全性: ランダム化、同等性試験
2011.09.21 マグネシウム摂取と2型糖尿病発症リスク
2011.02.17 低Mg濃度は糖尿病患者のグリコヘモグロビン(糖化ヘモグロビン:HbA1c)上昇に関連
2011.01.2 マグネシウム摂取とメタボリックシンドロームの関係
2010.12.21 マグネシウム摂取量と全身性炎症、インスリン抵抗性と糖尿病発症との関連
2010.09.14 マグネシウム摂取量と全身性炎症、インスリン抵抗性と糖尿病発症との関連
2010.02.24 健常ヒト被検者の食後血清脂質反応に対するマグネシウムの影響
2009.12.29 生活習慣病に対するミネラル栄養の重要性 Mg(マグネシウム)
2009.09.08 WHO 飲料水中のカルシウムとマグネシウム: 公衆衛生的意義 2009
2009.03.13 糖尿病と合併症 −生活習慣との関わり−
2009.02.10 糖尿病予備群含め2210万人=1年で340万人増 厚労省
2008.08.13 低マグネシウム血症と代謝性グルコース障害リスク: 10年追跡調査研究
2008.06.03 『第51回日本糖尿病学会』で横田先生が発表
2008.02.04 『日本糖尿病療養指導士認定機構 CDEJ News Letter』に横田先生の記事が掲載
2008.01.23 WHO報告書 『飲料水中の栄養素』−その2−
2008.01.22 WHO報告書 『飲料水中の栄養素』−その1−
2007.08.21 メタボリックシンドロームの予防 −その2−
2007.08.20 メタボリックシンドロームの予防 −その1−
なお、糖尿病やメタボリックシンドロームなどとマグネシウム摂取不足との関係は、横田邦信著の“マグネシウム健康読本”(現代書林)にも詳しく書かれていますのでご参考にして下さい。
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。
参考文献 −更新−
本日、参考文献の「官公庁関係」に以下の文献を追加いたしましたので、ご参考にして下さい。文献内容は近日中にアップ致します。
「平成21年東京都民の健康・栄養状況(最新版)」 平成23年8月東京都福祉保健局
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kenkou/kenko...
マグネシウム入り讃岐うどん『健麺うどん』が開発
2011年12月2日、四国新聞が地域経済欄に「マグネシウム入りうどん キスマ・ソルブズ開発/糖尿病予防効果も」の記事を配信したのでお知らせします。
四国新聞掲載サイト:
http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/economy/2011...
協和化学工業グループで健康食品の販売などを手掛けるキスマ・ソルブズ(香川県三木町)が、天然の液体マグネシウムを国産小麦に練り込んだ「健麺(けんめん)うどん」栄養機能食品(マグネシウム)の乾麺を開発し、今月からキスマ・ソルブズ社のインターネットで販売を開始しました。興味のある方は、同社のウエッブサイト http://www.kisuma.co.jp/ を閲覧ください。
「健麺うどん」の開発には、ヒトの身体には必須・主要なマグネシウムと糖尿病に詳しい東京慈恵会医科大学の横田邦信教授らと共同で研究開発されました。
「健麺うどん」1食(100グラム)当たりには115mgのマグネシウムが含みます。日本人の食事摂取基準(2005年版および2010年版)男性30〜49歳でマグネシウムの推奨量は、1日当り370mgなので、これは1日の推奨摂取量の約3割に当たる。同社は「食べただけで糖尿病を防げるというわけではないが、食生活のバランスを見直すきっかけにしてほしい」としている。
「健麺うどん」開発の背景には、以前から讃岐うどんの本場では、香川県の糖尿病死亡率が全国でも上位との報告とも関係しているようです。
2006年7月23日に四国新聞が「非常事態! 香川の糖尿病死亡率 うどん、車に落とし穴」について掲載しました。
四国新聞サイト:
http://www.shikoku-np.co.jp/feature/tuiseki/349/
2011年9月30日に女性自身が「うどん好きが糖尿病になりやすいって本当?」について掲載しました。
女性自身掲載サイト:
http://jisin.jp/serial/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E3%82%B9%E...
Yahooニュースサイト:
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110930-000003...
【MAG21研究会コメント】
讃岐うどんの本場の香川県でマグネシウム入り讃岐うどん『健麺うどん』栄養機能食品(マグネシウム)の乾麺が開発されたのは喜ばしいことです。
MAG21研究会の 2011.01.12国民のマグネシウム摂取量不足 に掲載していますが、日本人の食事摂取基準(2005年版および2010年版)男性30〜49歳でマグネシウムの推奨量は、1日当り370mgです。この推奨量と比較すると、1日当りの平均摂取量は、「平成21年 国民健康・栄養調査結果の概要について」では男性30〜49歳で246〜254mgと116〜124mg不足状態が持続していますので、不足分は『健麺うどん』の1食(100グラム)当たり115mgのマグネシウムに相当します。
この機会に、健康長寿の為に食生活の主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスおよび生活習慣の見直しをし、糖尿病・メタボリックシンドロ−ムなどの生活習慣病などの予防に繋げて戴きたいものです。
なお、『健麺うどん』の開発には、当MAG21研究会メンバーの東京慈恵会医科大学の横田邦信教授、恩田威一教授、他と共同で研究開発されました。
MAG21研究会では、マグネシウム(Mg)摂取不足と糖尿病・メタボリックシンドロ−ムなどの生活習慣病をはじめ様々な疾患との関係に関する新しくかつ正しい知識と情報を提供し、Mgの啓発活動を行っています。
この記事に対するご意見やご質問を心からお待ちしております。
中国の男性と女性の糖尿病有病率
2010年、中国国立糖尿病・代謝異常研究グループの研究者らは、中国の男性と女性の糖尿病有病率に関する報告をしたので、その論文概要を以下に紹介します。
背景:
中国の生活習慣の急速な変化のため、糖尿病が流行るかもしれないという懸念があります。中国の成人で糖尿病の有病率を推計するために、2007年6月から2008年5月まで全国調査を行ないました。
方法:
全国的に代表サンプルとして20歳以上46,239(男性18,419、女性27,820)人が14省・地方自治体から研究に参加しました。
夜間断食後、参加者は経口ブドウ糖負荷試験を受け、未診断の糖尿病と予備群(Prediabetes)(例、空腹時血糖異常または耐糖能異常)を確認するために空腹時と負荷後2時間の血糖値を測定しました。
以前診断された糖尿病は、自己申告に基づいて決定しました。
結果:
年齢標準化した全体の糖尿病(以前診断された糖尿病および以前未診断の糖尿病の両方を含む)と予備群の有病率は、それぞれ9.7%(男性10.6%、女性8.8%)および15.5%(男性16.1%、女性14.9%)でした。糖尿病有病者、予備群はそれぞれ9240万人の成人(男性5020万人、女性4220万人)および1億4820万人の成人(男性7610万人、女性7210万人)でした。
糖尿病有病率は年齢(20〜39, 40〜59, 60歳以上それぞれで 3.2%, 11.5%, 20.4%)、体格指数(BMI)(18.5未満, 18.5〜24.9, 25.0〜29.9, 30.0以上それぞれで4.5%, 7.6%, 12.8%, 18.5%)と共に増加が見られました。糖尿病有病率は都市の居住者が地方より高くありました(11.4%対8.2%)。糖尿病有病率は、耐糖能異常が空腹時異常より高くありました(男性11.0%対3.2%、女性10.9%対2.2%)。
結論:
中国で糖尿病が大きな公衆衛生問題になっており、糖尿病の予防と治療を目的とした戦略が必要であることが示されました。
参考資料:
Yang W, Lu J, Weng J, et al. Prevalence of diabetes among men and women in China. New England Journal of Medicine 362:1090-1101, 2010
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0908292#t=...
【コメント】
将来糖尿病有病率が激増する可能性がある中国での現状が示された点で意義があると言えます。
次回は、この報告に関連し、国際糖尿病連合(IDF)の発表について掲載します。
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。
参考文献 −更新−
本日、参考文献の「英文」に以下の文献を追加いたしました。文献内容は近日中にアップします。
中国の男性と女性の糖尿病有病率
Yang W, Lu J, Weng J, et al. Prevalence of diabetes among men and women in China. New England Journal of Medicine 362:1090-1101, 2010
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0908292...
高齢2型糖尿病患者のうつ治療における経口マグネシウムサプリメントの有効性と安全性: ランダム化、同等性試験
2008年、メキシコMexican Social Security Instituteの研究者らは、高齢の2型糖尿病患者のうつ治療における経口マグネシウムサプリメントの有効性と安全性: ランダム化、同等性試験に関する報告をしたので、その論文概要を以下に紹介します。
目的:
高齢の2型糖尿病および低マグネシウム血症で新たに診断されたうつ病の治療で、経口マグネシウムサプリメントとして塩化マグネシウム(MgCl2)の効能および安全性を評価することでした。
方法:
対象は高齢の2型糖尿病および低マグネシウム血症23人(女性12人、男性11人)の患者で、12週間中毎日マグネシウム量として450mgの塩化マグネシウム5%溶液50 mL或いはイミプラミン(抗うつ薬)50mgのいずれかを服用し、ランダムに割り付けしました。過去6ヵ月間におけるやもめ暮らしまたは離婚、アルコール中毒、中枢神経系の変性疾患、最近の糖尿病診断、抗うつ薬の前歴があるか現在治療中、慢性下痢、利尿剤の使用と腎機能低下を除外基準としました。低マグネシウム血症は血清マグネシウム濃度1.8 mg/dL未満およびYasavage and Brink スコア(高齢者うつ状態判定法)11ポイント以上をうつ症状の定義としました。試験開始後の主要なアウトカム(エンドポイント)はうつ症状の改善としました。
結果:
ベースライン時、塩化マグネシウムとイミプラミン群それぞれの年齢(69 ± 5.9および 66.4 ± 6.1歳, p = 0.39)、糖尿病期間(11.8 ± 7.9および 8.6 ± 5.7年, p = 0.33)、血清マグネシウム濃度(1.3 ± 0.04および 1.4 ± 0.04 mg/dL, p = 0.09)、Yasavage and Brink スコア(17.9 ± 3.9 および16.1 ± 4.5ポイント, p = 0.34)に差はありませんでした。追跡後、試験対照群間におけるYasavage and Brinkスコア(11.4 ± 3.8 and 10.9 ± 4.3ポイント, p = 0.27)には有意差はありませんでしたが、血清マグネシウム濃度にはイミプラミン群(1.5 ± 0.07 mg/dL)より塩化マグネシウム群(2.1 ± 0.08 mg/dL), p < 0.0005が有意に高かった。
結論:
塩化マグネシウムは、低マグネシウム血症を伴ったうつ病高齢者2型糖尿病治療にイミプラミン毎日50 mgとほぼ同等に有効です。
参考資料:
Barragán-Rodríguez L, Rodríguez-Morán M, Guerrero-Romero F. Efficacy and safety of oral magnesium supplementation in the treatment of depression in the elderly with type 2 diabetes: a randomized, equivalent trial. Magnesium Research 21:218-223, 2008
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19271419
【コメント】
この研究の研究者(Barragán-Rodríguez L, Rodríguez-Morán M)は2006年に三重県の賢島で開かれた国際マグネシウムシンポジウムに参加されたご夫妻です。彼らは2007年に高齢の糖尿病患者におけるうつ症状と低マグネシウム血症についての研究結果を報告しました(当ホームページでは前回その記事をUPしました。「高齢の糖尿病患者のうつ症状と低マグネシウム血症」をご参照ください)。
次に2008年、マグネシウムサプリメントの臨床介入試験で、低マグネシウム血症を伴ったうつ病高齢者2型糖尿病患者の治療に抗うつ剤イミプラミンと同等の効果を示した世界初の有効性と安全性のエビデンスを示した研究結果に意義があると言えます。
この論文の本文では、興味ある内容も報告されているので、以下に列記し解説します。
● この臨床試験参加者は、当初265人の患者がスクリーニングされ、次に35人の適格者が選ばれましたが参加拒否した為、最終的に23人(女性12人、男性11人)の適格被検者がランダム割付けされました。
● 合計265人のうち、うつ病、低マグネシウム血症、うつ病+低Mg血症の有病率はそれぞれ44.9、38.9、13.2%でした。
● Table 1. 塩化マグネシウム(MgCl2)或いはイミプラミンを服用した高齢の2型糖尿病患者のベースラインと追跡調査(終了時)の特徴

*p < 0.005 同じグループの主題におけるベースラインと追跡
調査間の比較
**p < 0.0005 塩化マグネシウムとイミプラミン間の比較
Ø Yasavage and Brink スコア(高齢者うつ状態判定法)は、0〜10ポイント うつ病無し、11〜20ポイント 軽いうつ病、21〜30ポイント 中等度から重度のうつ病です。ベースライン時の全対照被検者では、16人(69.6%)が軽度、7人(30.4%)が中等度から重度のうつ病を呈していましたが、追跡調査時のスコアは塩化マグネシウムとイミプラミン両群でおよそ11ポイントまで有意に低下しました。
Ø 中性脂肪のトリグリセリドは、塩化マグネシウムグループ間で追跡調査時には有意な低下を認めました。
Ø HDLコレステロールは、塩化マグネシウムグループ間で追跡調査時には有意な増加を認めました。
Ø 血清マグネシウムは、塩化マグネシウムグループ間で追跡調査時には有意な増加を認めて正常値を示しました。塩化マグネシウム投与により、トリグリセリド、HDLコレステロール、そしてうつ状態の改善に影響したのは明らかです。
*この論文では、塩化マグネシウム投与群でのトリグリセリドの有意な改善と改善作用についてコメントされていませんが、糖尿病患者ではマグネシウムの不足によるLPL(リポ蛋白リパーゼ)の活性が低下しているので、マグネシウムを補充することで改善したと考えられます。同様のマグネシウム補充効果は、当研究会メンバーの横田邦信らが軽症の2型糖尿病患者を対象にした臨床研究でも確認されています。
Yokota K, et al., Clinical Efficacy of Magnesium Supplementation in Patients with Type 2 Diabetes. J Am Coll Nutr 23:506S-509S, 2004
http://www.jacn.org/cgi/content/full/23/5/506S
● イミプラミン対照の全被検者では少なくとも1つ以上の薬関連有害事象、例えば口の乾き、便秘、発汗、ほてり、視覚調節と視力の障害、排尿障害、疲労、眠気、心配増加、睡眠障害、混乱、見当識喪失と聴覚の幻覚、微小振戦、頭痛とめまい、洞頻脈、吐き気、食欲不振とかゆみを認めました。2人はイミプラミンの副作用によって途中で止めました。
● 塩化マグネシウムの被検者では、3人に軽い腹痛と下痢を認めましたが、マグネシウムの為に途中で止めたものはありませんでした。
● 高齢者のうつ病治療において塩化マグネシウムの安全性、そして、イミプラミンよりよく許容されることを示します。
● 結論として、2型糖尿病と低マグネシウム血症を伴う高齢のうつ病治療における塩化マグネシウムの有効性と安全性を初めて示し、特に2型糖尿病の高齢者で、うつ病の徴候がある場合に血清マグネシウムが測定されるべきであるという意見は支持されます。
当ホームページでは以下のサイトでメキシコの研究者らの報告に関してご紹介してきました。
2011.11.07 高齢の糖尿病患者のうつ症状と低マグネシウム血症
2008.08.13 低マグネシウム血症と代謝性グルコース(ブドウ糖)障害のリスク: 10年追跡調査研究
2008.06.03 『第51回日本糖尿病学会』で横田先生が発表
2008.02.28 低血清マグネシウムとメタボリックシンドローム
2007.08.20 メタボリックシンドロームの予防 −その1−
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。

