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米国FDA注意喚起 プロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期服用で低Mg血症の可能性

米国FDA注意喚起 プロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期服用で低Mg血症の可能性

 

201132日、米国食品医薬品局(FDA)は胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などの適応を持つ処方薬のプロトンポンプ阻害薬(PPI)を1年以上長期に服用した場合、低マグネシウム(Mg)血症を来す可能性があると公表し、注意喚起しました。

 

この注意喚起の概要を以下にハイライト致します。

 

l    プロトンポンプ阻害薬(PPIは、胃酸の量を減少させることによって、逆流性食道炎(GERD)、胃・小腸潰瘍、食道の炎症を治療するのに用いられています。2009年には、米国で約2100万人の患者にPPIが処方され、通常平均治療期間は約180(6か月) でした。

 

l   FDA現在承認している処方PPIは、esomeprazoledexlansoprazole、オメプラゾール(オメプラール、オメプラゾン)、omeprazole and sodium bicarbonate、ランソプラゾール(タケプロン)、pantoprazole sodium、ラベプラゾールナトリウム(パリエット)です。

 

注:カタカナは日本で承認されている薬剤で( )内は商品名です。

 

l    低マグネシウム(Mg)血症は、筋肉痙攣(テタニー)、不規則な心拍(不整脈)、痙攣(発作)を含む重篤有害事象をもたらすことがありますが、患者は必ずしもこれらの徴候を示すわけではありません。一般に、低Mg血症の治療はMgサプリメントを必要とします。 また、PPIを服用している患者の低Mg血症の治療は、PPI服用を止める必要がある場合もあります。

 

l    医療従事者は、PPIの長期投与を行う場合や、低Mg血症を引き起こし得るジゴキシン利尿薬、他の薬剤と併用して投与する場合、投与開始前に血清Mg値の測定を考慮すべきです。ジゴキシン(強心薬)を投与される患者にとって、低マグネシウム血症が重篤な副作用の可能性を高める場合があるので、これは特に重要です。医療従事者はこれら患者のマグネシウム・レベルを定期的にチェックすることを考慮すべきです。

 

l    PPIからの低Mg血症の潜在的リスクに関する情報は、すべての処方PPI添付文書に追加されます。

 

l  患者用追加情報

1.     PPI薬を服用中のあなた(またはあなたの子供)が動悸、筋肉痙攣、振えまたは異常な心拍数やリズム、徴候が見られたら、即、処置を求めてください。子供では、異常な心拍数は疲労、胃の調子が悪い、めまい、頭がふらふらするといった症状で訴えることがあります。

 

2.     今までに、低Mg血症があると言われたことがあるかどうか、または低Mg血症を引き起こすかもしれない薬剤(ジゴキシン、利尿剤等)、または他の薬を服用しているかどうかを医療従事者に伝えてください。

 

3.     処方薬のPPIを服用している間、医療従事者はしばしば血中Mg値をチェックするかもしれません。

 

4.     医療従事者に話さずに処方薬PPIを服用するのをやめないでください。

 

5.     PPI薬に関するあらゆる問題や心配については医療従事者と話してください。

 

6.     一般薬のPPIを服用する場合は、パッケージ上の指示に注意深く従ってください。

 

7.     長い期間一般薬の PPIを服用している場合は医療従事者に必ず伝えるようにしてください。

 

8.     FDA MedWatchプログラムの「お問い合わせ」情報を使って副作用を報告してください。

 

l  医療従事者用追加情報

1.     処方PPIの長期服用が予想される患者、あるいは低Mg血症を引き起こしうるジゴキシンや他の薬(例えば、利尿剤)との併用服用には、処方PPI開始前に血中マグネシウム値を測定し、その後定期的にチェックすることを考慮してください。

 

2.     低マグネシウム血症は、ループ利尿薬[フロセミド(ラシックス)、ブメタニド(ルネトロン)、トラセミド(ルプラック)、エタクリン酸(一般用医薬品)]とサイアザイド系利尿薬[クロルチアジド(フルイトラン)、ヒドロクロロチアジド(ニュートライド)、インダパミド(ナトリックス)、metolazoneで起こります。これらの薬剤は、単独使用した時、あるいは、他の高血圧治療薬(例えば、ベータ遮断薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬やACE阻害薬)と併用される時に低マグネシウム血症を引き起こすことがあります。

 

3.     PPIを服用する患者に不整脈、テタニー、振えまたは痙攣発作を見た場合、即医療従事者のケアを求めるようにアドバイスしてください。これらは低Mg血症の徴候であるかもしれません。

 

4.     特に臨床的に徴候を呈する患者においてPPIは低Mg血症の考えられる原因であるとみなしてください。

 

5.     Mg血症になる患者は、マグネシウム補充に加えてPPI服用中止を必要とする場合もあります。

 

6.     消費者が、自分の判断あるいは医療従事者の勧めに基づき、一般用医薬品のPPIの注意文書に記載された期間を上回る期間、PPIを服用しているかもしれないことにも注意してください。これはFDAで認可していません。一般薬PPIの長期服用を勧める場合は、医療従事者は患者に低Mg血症のリスクを伝えなければなりません。

 

7.     FDA MedWatchプログラムの「お問い合わせ」情報を使ってPPIに関する有害事象を報告してください。

 

l  データ要約

FDAが精査したのは、PPIの長期服用で低Mg血症が報告された同局の有害事象報告システム(AERS38例、医学文献で報告された23例(AERS確認の8例を含む)です。

 

Mg血症が報告された成人症例では服用後3カ月ほとんどが1年後にMg血症の発現がみられています。4分の1Mgを補給しても低Mg血症は改善せず、PPI服用中止に至りました。中止後、約1週間で低Mg血症は改善しましたが、服用を再開すると約2週間で低Mg血症に陥りました。ほとんどの患者は、低Mg血症の治療後にPPIの服用を継続しませんでした。

 

臨床的な重篤有害事象は、低マグネシウム血症の一般的に報告される徴候および低カルシウム血症で報告される徴候と一致していました。重大なイベントとしては、テタニー、発作、振顫(しんせん、振え)、手足の痙攣(けいれん:こむら返り)、心房細動、心室性頻拍(supraventricular tachycardia)と異常なQT間隔を認めました。

 

長期PPI服用による低Mg血症の発現メカニズムは未だ知られていませんが、PPIの長期使用によるマグネシウムの腸管での吸収異常と関係するかもしれません。

 

 

参考資料:

FDA Drug Safety Communication: Low magnesium levels can be associated with long-term use of Proton Pump Inhibitor drugs (PPIs). U.S. Food and Drug Administration, 3-2-2011

http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm245011.htm



【MAG21研究会コメント】

米国FDAプロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期服用で低マグネシウム(Mg)血症の可能性ありと注意喚起したことは、わが国でも早急に医療従事者に周知徹底される必要があると言えます。

 

1.     PPIの長期服用で低Mg血症を呈し、重篤な有害事象をもたらすことがあり得ることが判明した点は注目すべき点と言えます。わが国でも、この処方薬としてのPPI従来のH2ブロッカーに比べて切れが良く、近年極めて多く頻繁にかつ安易に処方されている傾向があるので、長期服用の問題に対する適切な対応が求められます。また、低マグネシウム(Mg)血症の治療には、Mgサプリメント(酸化Mg:マグミット錠等)によるMg補充と、PPI服用中止が時に必要となる場合もあるようです。

 

2.     低Mg血症の病態はインスリン抵抗性惹起とも関連し2型糖尿病の発症リスクを高める可能性があると考えられます。また、糖尿病患者ではPPIを併用した場合血糖コントロールが悪化する可能性も考えられます。

 

3.     利尿薬などの降圧薬は低Mg血症を来すので、そのような症例でのPPIの併用は低Mg血症の増悪を助長し得るので注意が必要と言えます。なお、血圧コントロールが悪い症例では低Mg血症の存在の有無を検証することも薦められます。

 

以下に、MAG21研究会で取り上げたMg摂取不足や低Mg血症と2型糖尿病発症との関連の記事を示します。ご参考にして下さい。

 

2011.02.17  低Mg濃度は糖尿病患者のグリコヘモグロビン(糖化ヘモグロビン:HbA1c)上昇に関連

 

2011.01.27  マグネシウム摂取とメタボリックシンドロームの関係

 

2011.01.12  国民のマグネシウム摂取量不足

 

2010.12.21  マグネシウム摂取量と全身性炎症、インスリン抵抗性と糖尿病発症との関連

 

2010.11.26  日本人のマグネシウム摂取と2型糖尿病

 

2010.11.18  東京都民のマグネシウム摂取量不足持続

 

2010.07.13  薬剤としてのマグネシウム

 

2010.05.19  『健康のひろば』平成22年5月11日号に横田先生登場

 

2010.02.24  健常ヒト被検者の食後血清脂質反応に対するマグネシウムの影響

 

2009.12.29  生活習慣病に対するミネラル栄養の重要性 Mg(マグネシウム)

 

2009.12.15  閉経後女性の多民族的コホートにおける食事性マグネシウム摂取と炎症および内皮機能障害マーカーの関係

 

2009.09.08  WHO 飲料水中のカルシウムとマグネシウム: 公衆衛生的意義 2009

 

2009.08.25  口マグネシウムサプリメントは軽症高血圧患者の24時間血圧を低下

 

2009.07.01  日本人の食事摂取基準(2010年版)

 

2009.06.02  血清および食事性マグネシウムと虚血性脳卒中のリスク

 

2009.05.07  米国成人の食事性マグネシウム摂取量

 

2009.03.13  糖尿病と合併症 −生活習慣との関わり−

 

2009.02.10  糖尿病予備群含め2210万人=1年で340万人増 厚労省

 

2009.01.19  マグネシウムの脂肪細胞分化に及ぼす影響

 

2008.11.20  マグネシウム健康読本

 

2008.11.10  低血清マグネシウムと心血管死亡率

 

2008.10.30  マグネシウムと脂質異常症

 

2008.10.20  血清マグネシウム濃度と頚動脈硬化指標

 

2008.08.13  低マグネシウム血症と代謝性グルコース障害リスク: 10年追跡調査研究

 

2008.06.03  『第51回日本糖尿病学会』で横田先生が発表

 

2008.05.01  『治療学』に横田先生の論文が掲載

 

2008.02.28  低血清マグネシウムとメタボリックシンドローム

 

2008.02.04  『日本糖尿病療養指導士認定機構 CDEJ News Letter』に横田先生の記事が掲載

 

2008.01.24  経口マグネシウムサプリメントの影響

 

2008.01.23  WHO報告書 『飲料水中の栄養素』−その2−

 

2008.01.22  WHO報告書 『飲料水中の栄養素』−その1−

 

2007.10.19  マグネシウムの食後高脂血症に及ぼす影響

 

2007.09.26  マグネシウムQ&A Q7 マグネシウムは、生活習慣病の予防以外の疾病予防にも利用できますか?

 

2007.08.23  女性及び小児とメタボリックシンドロームについて マグネシウムとカルシウム・・・  マグネシウムとカルシウム摂取量の割合が重要ですか?

 

2007.08.21  メタボリックシンドロームの予防 −その2−

 

2007.08.20  メタボリックシンドロームの予防 −その1−

 

2007.08.13  なぜマグネシウム不足?

 

なお、糖尿病やメタボリックシンドロームなどとマグネシウム摂取不足と生活習慣病との関係は、横田邦信著の“マグネシウム健康読本”(現代書林)にも詳しく書かれていますのでご参考にして下さい。

 

 




この記事に対するご意見やご質問を心からお待ちしております。

 




 

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