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女性のCaサプリメントと心血管イベントのリスク

女性のCaサプリメントと心血管イベントのリスク

 

20114月、ニュージーランド・Auckland大学医学部、スコットランド・Aberdeen大学の共同研究者らは、ビタミンDの有無に関わらずカルシウム(Ca)サプリメントと心血管イベントのリスク: 女性の健康イニシアティブのデータセットおよびメタ解析の再分析に関する研究結果を報告したので、その論文概要を以下に紹介します。

 

目的:

女性の健康イニシアティブ(Women’s Health Initiative, WHI)データセットを使用し、WHIカルシウム(Ca)/ビタミンDサプリメント研究(WHI CaD研究)で個人のCaサプリメント使用の心血管リスクに及ぼす影響を検討することと、最近報告されたCaサプリメントおよび心血管リスクのメタ解析を再解析することを目的としました。

 

デザイン:

研究のデザインはWHI CaD 研究データセットの再分析および8つの他の研究に統合したメタ解析を行いました。

 

データソース:

WHI CaD研究の対象は、地域在住の閉経後女性36282人で7年間CaとビタミンD摂取(Ca 1g、ビタミンD 400 IU/日)の無作為化プラセボ対象試験を実施しました。

 

主要転帰評価項目:

4つの心血管イベントおよび併存(心筋梗塞、冠動脈再建、冠動脈心疾患死、脳卒中)の発症率を患者レベルのデータと試験レベルのデータで評価しました。

 

結果:

WHI CaD研究では、個人的使用のCaサプリメントとCaおよびビタミンDの間で心血管イベントに相互作用がありました。

無作為化で個人的にCaサプリメントを摂っていない女性16718人(46%)では、CaとビタミンDに伴う心血管イベントのハザード比は1.131.22(臨床的心筋梗塞あるいは脳卒中 P=0.05、臨床的心筋梗塞あるいは血管再生 P=0.04)に及んでいました。しかし、個人的にCaサプリメントを摂っている女性では、心血管リスクは変わりませんでした。

プラセボ対象3つのメタ解析では、CaおよびビタミンDが心筋梗塞(相対リスク1.2195% CI 1.011.44)、P=0.04)、脳卒中(1.201.001.43)、P=0.05)、心筋梗塞あるいは脳卒中の構成(1.161.021.32)、P=0.02)でリスクを増加させました。

CaあるいはCaおよびビタミンDのプラセボ対象試験のメタ解析では、8つのCaサプリメント試験と個人的にCaサプリメントを摂らないWHI CaD参加者28072人の試験レベルのデータを利用しました。結果は、心筋梗塞あるいは脳卒中の発症総数が1384例に認められました。

CaあるいはCaおよびビタミンDは、心筋梗塞(相対リスク1.241.071.45)、P=0.004)、心筋梗塞あるいは脳卒中の構成(1.151.031.27)、P=0.009)でリスクを増加させました。

(注: 心筋梗塞発症の相対リスクが1.24倍、心筋梗塞あるいは脳卒中の構成では1.15倍高いと言う意味です)

 

結論:

CaサプリメントはビタミンDの有無に関わらず個人的Caサプリメントの一般使用によるWHI CaD 研究で心血管イベント、特に心筋梗塞のリスクをある程度高めます。骨粗鬆症の管理におけるCaサプリメントとしての役割の再評価が必要と言うことになります。

 

 

参考資料:

Bolland MJ, Grey A, Avenell A, Gamble GD, Reid IR. Calcium supplements with or without vitamin D and risk of cardiovascular events: reanalysis of the Women's Health Initiative limited access dataset and meta-analysis. British Medical Journal 2011;342:d2040 doi: 10.1136/bmj.d2040

http://www.bmj.com/content/342/bmj.d2040

 

 

 

コメント

この研究者らは、ビタミンDの有無に関わらず個人的なカルシウム(Ca)サプリメントの摂取が心血管イベント、特に心筋梗塞リスクを高めることを指摘しています。

 

まず、一般の方、特に女性においてCaサプリメントは、ビタミンDの有無にかかわらず、骨粗鬆症の予防と治療のために日頃から広く使われていますが、Caだけの摂り過ぎは心疾患リスクを上昇させるということです。

 

次に、医療においては骨粗鬆症の管理におけるCaサプリメントの役割について再評価する必要があると言えます。多くのCa製剤がありますが、長期投与も心疾患リスクを上昇させるということです。

 

MAG21研究会のホームページでは最近、米国予防医療サービス委員会が「成人における骨折予防のためのビタミンDおよびカルシウムのサプリメント」について推奨しないとする新勧告を公開した内容を掲載しました。この委員会は、Bollandらの論文もレビューして参考文献に載せています。

 

2013.05.15  骨折予防でのビタミンD・カルシウム摂取推奨せず: 米勧告

 

この研究者らは、以前から健康な閉経後女性でのCaサプリメントが心血管疾患、脳血管疾患に及ぼす影響を調査して報告しています。この報告内容は当ホームページでもご紹介しました。

 

2008.03.26  Ca摂取が心血管疾患に悪影響か

 

2010.08.26  Caサプリメントで心筋梗塞リスク31%上昇

 

CaサプリメントあるいはCa製剤については、内分泌専門医の間でも長い間懸念が持たれていました。それは心血管イベントのことではなく、尿路結石や腎機能低下等に関しての懸念でした。Caは「日本人の食事摂取基準」に対し、摂取不足が指摘されているミネラルですが、安全で健康に良いというイメージが強く、積極的にかつ安易に補充されている傾向があります。

 

Ca製剤の添付文書には、昔から既に、“高Ca血症、腎結石、重篤な腎不全には禁忌であり、副作用には高Ca尿症、高Ca血症、腎機能低下、腎結石、便秘、悪心などがある。重要な基本的注意として、「長期投与により血中カルシウムが高値及び尿中カルシウムが高値になることがあるので、長期投与する場合には定期的に血中カルシウム又は尿中カルシウムを検査することが望ましい。また、高カルシウム血症が現れた場合には投与を中止する。」”とあります。しかしながら一般に安易に考えられているのが現実です。

 

日本でも一般的に、既述のようにCa摂取の重要性と認識が高いので、この論文はCaばかりを摂る事へのひとつの警鐘と考えます。この病態にはマグネシウム(Mg)の相対的・絶対的不足も大きく関わっていると考えられます。Caを意識して摂るのであればMgはそれ以上に意識して摂る必要があることはこれまで述べてきた通りです。

 

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