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食事(性)およびサプリメントによるカルシウム摂取と心血管疾患死亡率
食事(性)およびサプリメントによるカルシウム摂取と心血管疾患死亡率

 

20134月、米国国立がん研究所、国立加齢医学研究所、ウェイクフォレスト大学医学部、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの共同研究者らは、食事(性)およびサプリメントによるカルシウム摂取と心血管疾患死亡率: 米国国立衛生研究所 (National Institutes of Health: NIH) AARP食と健康研究に関する研究結果を報告したので、その論文概要を以下に紹介します。

 

注釈: AARP (formally the American Association of Retired Persons、旧称:全米退職者協会)食と健康研究の歴史は以下のサイトに掲載されています。

http://dietandhealth.cancer.gov/history.html 

 

重要:

カルシウム摂取は特に高齢の人達における骨の健康効果のために推奨されています。しかしながら、心血管健康に関して高カルシウム摂取量の潜在的有害作用については懸念されています。

 

目的:

食事(性)およびサプリメントによるカルシウム摂取が、心血管疾患(CVD)、心臓病と脳血管疾患による死亡率と関係するかどうかを調査することを目的としました。

 

デザイン:

前向き研究で1995から1996年までカリフォルニア、フロリダ、ルイジアナ、ニュージャージー、ノースカロライナ、ペンシルバニアと2つのメトロポリタン地域アトランタ(ジョージア)とデトロイト(ミシガン)の居住者を募集しました。

 

参加者:

国立衛生研究所AARP食と健康研究から男女5071歳計388229人(男性219059人、女性169170人)が参加しました。

 

主要転帰評価項目:

食事(性)およびサプリメントによるカルシウム摂取量はベースラインで評価しました(1995-1996)。サプリメントによるカルシウム摂取量は、マルチビタミン剤と個々のカルシウムサプリメントからのカルシウムを含みます。心血管疾患死は国民死亡記録(National Death Index)を用いて判明しました。人口統計、ライフスタイル、食事関連を調整し、多変量コックス比例ハザード回帰モデルにて相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を推定しました。

 

結果:

この研究参加者の特徴を表1に示します。

 

平均12年間の追跡調査期間中、心血管疾患死は男女それぞれ7904人、3874人認めました。カルシウム含むサプリメントは男性の51%、女性の70%が摂っていました。

 

男性においてサプリメントによるカルシウム摂取の場合、心血管疾患死亡リスクが1.2倍高く(RR>1000 0 mg/, 1.20; 95% CI, 1.05-1.36)、特に心臓病死(RR, 1.19; 95% CI, 1.03-1.37)と関係を認めましたが、脳血管疾患死亡リスク(RR, 1.14; 95% CI, 0.81-1.61)は著しく高いことはありませんでした。女性ではサプリメントによるカルシウム摂取は、心血管死亡リスク(RR, 1.06; 95% CI, 0.96-1.18)、心臓病死(1.05; 0.93-1.18)、或いは脳血管疾患死亡リスク(1.08; 0.87-1.33)と関係がみられませんでした。

 

食事(性)カルシウム摂取は、男性女性どちらも心血管疾患死と無関係でした。

 

1. 研究参加者の特徴(一部抜粋)

10-129 研究参加者特徴

* 各図表をクリックすると拡大表示します。

 

結論:

サプリメントによるカルシウムの高摂取は女性でなく男性で心血管疾患死の過剰なリスクと関係していることが示唆されました。骨健康を超えたサプリメントによるカルシウムの摂取による影響はさらなる研究が必要です。

 

 

参考資料:

Xiao Q, Murphy RA, Houston DK, Harris TB, Chow WH, Park Y. Dietary and supplemental calcium intake and cardiovascular disease mortality: the National Institutes of Health-AARP diet and health study. JAMA Intern Med. 2013 Apr 22;173(8):639-46. doi: 10.1001/jamainternmed.2013.3283

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23381719 

 

 

 

コメント

この研究者らは、米国の大規模集団の前向き研究によるカルシウム(Ca)サプリメントの高い摂取量は女性でなく男性で心血管疾患死リスク1.2倍、心臓病死リスク1.19倍、脳血管疾患死リスク1.14倍高めることを示し、さらなる研究が必要だと指摘しています。

 

MAG21研究会では今まで、女性においてCaサプリメントだけの摂り過ぎは心疾患リスクを上昇させるという研究論文を紹介して来ましたが、今回初めてNIHの研究者らが女性でなく男性で心血管疾患リスクを高めると報告した点が注目されます。

 

更に、このNIHの論文には研究参加者のCaだけでなくマグネシウム(Mg)摂取量も報告していますが、両者と心疾患リスクの関係については一切言及あるいは考察されていません。この為、論文表1のCaMg摂取量のデータを用いてCa/Mgの食事摂取比率を求めたところ(表中の赤色表記)、食事性カルシウム摂取群で3.15.9、サプリメントによるカルシウム摂取群で3.64.7と何れも高値を示し、全体的に心疾患イベントのリスクを高めているのではないかと推測されます。

 

1. 研究参加者の特徴(一部抜粋)

10-130 研究参加者CaMg比

* 各図表をクリックすると拡大表示します。

 

MAG21研究会では、Ca/Mgの食事摂取比率が高いほど、虚血性心疾患の死亡率が高く、また2型糖尿病、メタボリックシンドローム、骨粗鬆症、および他の炎症に関連した種々の疾患の発症率に影響することが示唆されていることを報告しています。

2012.12.14  日本人のCa/Mg摂取比率が上昇傾向

 

最近、米国予防医療サービス委員会が「成人における骨折予防のためのビタミンDおよびカルシウムのサプリメント」について推奨しないとする新しい勧告を公開した内容を掲載しました。

2013.05.15  骨折予防でのビタミンD・カルシウム摂取推奨せず: 米勧告

 

CaサプリメントあるいはCa製剤については、内分泌専門医の間でも長い間懸念が持たれていました。それは心血管イベントのことではなく、尿路結石や腎機能低下等に関しての懸念でした。Caは「日本人の食事摂取基準」に対し、摂取不足が指摘されているミネラルですが、安全で健康に良いというイメージが強く、積極的にかつ安易に補充されている傾向があります。

 

Ca製剤の添付文書には、昔から既に、“高Ca血症、腎結石、重篤な腎不全には禁忌であり、副作用には高Ca尿症、高Ca血症、腎機能低下、腎結石、便秘、悪心などがある”と記載されています。重要な基本的注意として、「長期投与により血中カルシウムが高値及び尿中カルシウムが高値になることがあるので、長期投与する場合には定期的に血中カルシウム又は尿中カルシウムを検査することが望ましい。また、高カルシウム血症が現れた場合には投与を中止する。」”とあります。しかしながら一般に安易に考えられているのが現実です。

 

日本でも一般的に、既述のようにCa摂取が重要だとの認識が高いので、この論文はCaばかりを摂る事へのひとつの警鐘と考えられます。この病態にはマグネシウム(Mg)の相対的・絶対的不足も大きく関わっていると考えられます。Caを意識して摂るのであればMgはそれ以上に意識して摂る必要があることはこれまで述べてきた通りです。

 

2007.08.23  マグネシウムとカルシウム摂取量の割合が重要ですか?

 

2008.03.26  Ca摂取が心血管疾患に悪影響か

 

2009.01.07  カルマグ摂取比と大腸がん

 

2010.05.19  『健康のひろば』平成22511日号に横田先生登場

 

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2010.08.26  Caサプリメントで心筋梗塞リスク31%上昇

 

2012.10.12  食事性カルシウ摂取、カルシウムサプリメントと心筋梗塞、脳卒中リスク及び心血管疾患死亡率との関係

 

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マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。





 

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